他人の難題を処理する役
人が何かの行動をする理由って、
一つじゃなくって、いろんな理由が、
複合的に絡み合ってるというのが、
実情だと思う私です。
それで、今日の話題ですが、
再放送ドラマ「おしん」の、
昭和10年2月のシーンに、
初めて、初子が登場するんですね。
その初子が、たぶん3月でしょうけど、
夜中にみずごりを取るんですよね、
戸外の井戸で。
その、みずごりを取る理由ですけど、
いろんな心理的要素が、
重層的に混ざり合ってると思います。
そこで今日は、その多くの理由の中から、
一つだけを取り上げてみたいんですが、
その理由の一つが、今日の標題である、
「他人の難題を処理する役」です。
さて、昭和9年の東京での物価について、
インターネット上に、
次のような記事を見つけました。
松坂屋の食堂でのお茶とお菓子:30銭
御徒町から神田駅までの切符代:5銭
日本ビクターの食堂のハヤシライス:25銭
東宝劇場の地下室のグリルで夜の定食:1円
地味なネクタイ:2円
キャラメル一箱:5銭
喫茶店での日本茶と羊羹:15銭
スイートポテト1個:1円
そこで、仮に
1円=現在の2500円で換算すると、
松坂屋の食堂でのお茶とお菓子:750円
御徒町から神田駅までの切符代:125円
日本ビクターの食堂のハヤシライス:650円
東宝劇場の地下室のグリルで夜の定食:2500円
地味なネクタイ:5000円
キャラメル一箱:125円
喫茶店での日本茶と羊羹:375円
スイートポテト1個:250円
ということになり、その記事を書いた人は、
「おおよそですが、
結構当たっているのではないでしょうか?」と、
書いています。
さて、次に、初子のことを書きます。
昭和10年2月に、健が、初子を連れて、
おしんの魚屋を訪れます。
健:「ご存知でしょうが、ここのところ東北は
冷害続きの凶作で続きで、全然と言っていいほど、
米がとれないんですよ。
それで、どこもかしこも、娘を売り飛ばして。」
おしん:「まさか、あの子。」
健:「知り合いに頼まれて、
50円で引き取ったのはいいんですが、
東京だって不景気の上に、そういう娘っ子が、
ドンドン出てくるし、おまけに当時は、
女郎屋だって、まだ商売にはならない。
下働きの口はないから、まいっちまってね。
そしたら、仲間が
大阪の飛田ってところの遊郭で
下働きの娘を欲しがっているもんですから。
ちょうどあっしも
大阪に用事があったもんですから、
ついでと言ってはなんですが、
めったに大阪に行くこともないもんで、
途中でこちらへ。」
おしん:「売られちゃうの? あの子。」
健:「いやあ、あっしも、
こんなことだけはしたくないんですけどね。
これも人助けだと思って。」
竜三:「かわいそうにね。今は下働きだけど、
遊郭と言ったら、いずれは
そういう所の女になっちまうんだろうね。」
それで、初子は、「3年の年季」で、
下働きに出されたということのようですけど、
あのう、3年間の労働賃金が、
50円ということになるわけで、しかも、
その50円は「親に渡った」わけですから、
初子にしてみれば、3年間、
「無給で働く」わけですね。
あの、3年間無給で働かされるわけですから、
その3年間は、「奴隷」と同じ情況だと、
私は思います。
それで、次回にまた続きを書きますけど、
初子はですね、初子の家の経済的問題を、
何とかする役割を負わされたわけで、つまり、
「他人の難題を処理する役」を担うわけで、
その「他人」とは初子の親であり、
「難題」とは初子の親の経済的困窮であり、
「処理」とは、初子が「売られる」ことで、
50円の収入を親に与えることなんですね。
まあ、続きは次回にします。